クックチルとニュークックチルとは?
高齢者施設や病院などでの調理は、人手不足や料理の味のばらつきなど、さまざまな問題を抱えています。
そこで、調理過程に急速冷却・冷凍などの方法を取り入れることで、計画的かつ安全に調理と食事の提供がおこなえる「新調理システム」を導入する施設が増えています。
その中でも特に「クックチル」や「ニュークックチル」は、大規模施設に適している方法だといわれています。そこで今回は、それらの特徴や異なる点について、詳しく解説していきます。
CONTSNTS(目次)
クックチルとニュークックチルの特徴
それでは、まずはそれぞれの特徴について、みていきましょう。
クックチル システム
この方法では、調理後の料理を急速に冷やした後、0~3℃の温度帯で保存します。料理を提供するときに再度加熱をして、盛り付け・配膳をおこなえばOKであるため、調理作業を効率化することができます。
0~3℃の温度帯は、細菌が繁殖しにくいため、調理した日を含めて最大で5日間保存することができます。冷やす作業から再度加熱する作業があるため、その工程に適したキッチンが必要になります。
課題点
この方法には、いくつかの課題点もあります。急速に冷やした後に再度加熱する方法であるため、焼き物など、相性が良くない料理があります。そうしたことも考慮して、献立を作る必要があります。
また、盛り付けや配膳は、再度加熱した後におこなうため、食数が多いと料理を提供するのに時間がかかることがあります。それにより、料理が冷めてしまう可能性があり、喫食者の満足度が下がってしまうことがあります。
ニュークックチルシステム
この方法では、調理後の料理を急速に冷やした後、食器に盛り付けをしてから、0~3℃の温度帯で保存します。そして、必要に応じて、再度加熱ができる専用のカートに入れて、料理を提供します。
盛り付けという作業を先におこなうことで、料理を提供する時間帯の人手を削減することができます。
また、クックチルと異なり、再度加熱をする時に人の手で触れないため、さらに衛生的な料理の提供が可能になります。また、食器ごと加熱できるため、喫食者からは、料理の温度について良い評価を得ることができます。
課題点
この方法にも、課題点はあります。料理を急速に冷やすための機器や、再度加熱するための専用カートが必要になるため、それなりにコストがかかります。
同時に、機器やカートを置くスペースも必要になります。そのため、初めてこの方法を導入する施設は、大変に感じることがあるでしょう。
また、再度加熱をすることによって食感が変わるような揚げ物などのメニューは、このシステムにはあまり向いていません。そのため、そうした点を考慮したうえで献立を立てる必要があります。
クックチルとニュークックチルシステムの共通点
ここまで、2つの特徴や課題点について解説してきました。それでは、ここからは2つの共通点について、みていきましょう。
作業時間の短縮
どちらの方法でも、大量に調理してから保存することが可能であるため、料理を喫食者に提供する前の作業時間を大幅に短縮することができます。
調理現場では人手不足が問題視されていることが多いため、作業時間を短縮できると、人手不足を解消することにもつながります。
質の高い料理を提供できる
これまでの調理方法では、調理者の技術によって料理のクオリティが左右されていました。しかし、マニュアル化そしてシステム化することで、そうした格差を減らし、質の高い料理を提供することが可能です。
調理方法によって相性の良し悪しがある
どちらも、調理の効率化には向いていますが、システム上、あまり適していない献立があります。そのため、バリエーションが豊富な献立を作るのが困難なケースがあります。そうなると、喫食者の料理に対する満足度が十分に得られない可能性が考えられます。
安全性の確保
食中毒を起こす菌が繁殖しやすいのは、10~60度だといわれています。どちらの方法も、その温度帯をスムーズに通過させることができるため、食中毒を起こすリスクを下げることができます。
特にニュークックチルでは、盛り付けを前倒しておこなうため、料理に手で触れることが少なく、より食中毒対策ができる方法だといえます。
喫食者に美味しい料理を提供するのは大切なことですが、まず安全性が確保されていることが大前提です。どちらも、安全性がしっかりと確保されている方法であるため、安心して料理を喫食者に提供することができます。
クックチルとニュークックチルシステムの異なる点
続いては、2つの異なる点についてみていきましょう。
盛り付け
クックチルにおける盛り付け作業は、料理を再度加熱してからおこないます。そのため、料理は温かい状態になっています。
一方で、ニュークックチルの場合は、再度加熱をおこなう前に盛り付けをおこないます。食中毒を起こしにくい温度帯になった料理を取り扱うため、手袋を付けた状態で盛り付け作業をおこなうことができます。
トングなどの調理器具を使って盛り付けるよりも、作業が速く行えるというメリットがあります。
食事を提供するまでにかかる時間
クックチルでは、盛り付け作業は、料理を喫食者に提供する前におこなうため、食数が多いほど作業に時間がかかります。料理が調理されてから、喫食者が実際に食べるまでに時間がかかってしまうことは、デメリットのひとつだといえます。
ニュークックチルでは、先に盛り付け作業がおこなわれているため、実際に喫食者に料理を提供するまでの時間が速く、大きなメリットだといえるでしょう。
必要な調理スタッフの人数
クックチルでは、盛り付け作業に時間を要する分、それだけ調理に携わるスタッフの数も必要になります。そのため、人手不足が深刻な現場では適していないかもしれません。
一方、ニュークックチルでは、料理を提供する時間に盛り付け作業がないため、ピークの時間にも人手が不要になります。
再加熱をする専用のカートを利用する場合には、トレーに料理を配膳してカートに入れるだけで良いため、さらに効率が良く、少ない人数で現場を回すことができます。そのため、特に食数が多い施設や人手不足に悩む施設に向いているでしょう。
料理の温度
クックチルでは、食器まで温かい状態で提供するわけではありません。また、盛り付け作業をしている間にも、料理が冷めてしまい、喫食者が満足しにくいというデメリットがあります。
しかし、ニュークックチルでは、食器まで温かい状態であり、盛り付け作業が前倒しでおこなわれているため、料理が冷めることもありません。喫食者の満足度が向上することは、大きなメリットだといえるでしょう。
調理システムの進化
今回、2つの調理システムについて解説してきました。
これまでは、実は「クックサーブ」という方法が主流におこなわれてきました。クックサーブは、調理してできた料理をすぐに喫食者に提供する方法のこと。
仕込みから実際に提供するまでの流れは分かりやすいものの、作業量が多いことや、ピークの時間に現場に余裕がなくなること、調理者によって料理のクオリティが変わるなどの課題点がありました。
クックチルは、そうした課題点をカバーすることができます。さらに、クックチルをより良くするために生まれたのがニュークックチルシステムです。
ほかにも、真空調理法や凍結含浸法、アウトソーシングなど、さまざまな新しい調理システムが開発されています。
調理を効率よくおこなえることで、現場に余裕が生まれて、安全かつクオリティの高い料理を喫食者に提供することができます。このように、日々、調理システムは進化を遂げているのです。
まとめ
本記事では、新しい調理のシステムを2つ、解説してきました。どちらも、調理にかかる時間を短縮することができたり、安全性や質の高い料理を提供できたりという共通点があります。
一方で、盛り付け作業の順番や、食事を実際に喫食者に提供するまでの時間、必要なスタッフの数、提供する料理の温度など、いくつか異なる点もあります。
どんなものにもメリット・デメリットがありますが、調理システムは日々、より良くなっています。今後も、安全性を十分に確保でき、喫食者の満足度が高い料理を提供すべく、さらに進化を遂げていくことでしょう。