嚥下障害とは?嚥下障害を持つ方はどんな食事がよいのか
人間の生命を維持するために欠かせない食事。食事には、単なるエネルギー摂取だけでなく、日々の楽しみやコミュニケーションなどの多様な側面があります。そんな食事がスムーズに行えなくなる原因の一つが嚥下障害です。ここでは、嚥下障害と、嚥下障害を持つ方におすすめの食事について紹介します。
CONTSNTS(目次)
嚥下障害とは
嚥下障害とは、一言でいえば「食べること、飲み込むことの障害」で、食べ物をうまく食べることができなかったり、飲み込むことができなかったりする状態のことです。
うまく食べることができない、という点に着目して、摂食・嚥下障害と呼ぶこともあります。具体的な症状は、食べるとむせる、食べ物を噛んだり飲み込んだりできない、食事に時間がかかり食べると疲れてしまうなど、多岐に及びます。
また、うまく食事ができないことで、体重が減る、低栄養や脱水を起こす、窒息するなど、嚥下障害をきっかけにして、身体へ別の悪影響を及ぼすということも。病気や加齢による筋力の衰退などを原因として、新生児から高齢者までさまざまな年齢の方にみられます。
とくに高齢者にとっては、嚥下障害が誤嚥性肺炎のきっかけになることもあり危険です。医師の診断などによって嚥下障害の症状が認められると、原因や年齢などによって、その人にマッチした改善策がとられます。
嚥下食の種類
嚥下食とは、嚥下障害によって食べ物を飲み込む力が衰えた人に合わせ、食材のとろみや食感、かたちを調整し、食べやすくした食事です。障害の程度によっていくつかの種類があり、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の定める嚥下食の分類によると、細かいところを除けばコード0からコード4までの段階があります。
まず、コード0は摂食・嚥下機能が重度に低下している場合に用いられる食品で、主に嚥下の訓練のために用いられるため嚥下訓練食品と呼ばれます。完全にすりつぶされた形状で、誤嚥した際を考慮してたんぱく質はほぼ入っておらず、ゼリー状かとろみのある液体のものかでさらに区分されるようです。
次に、コード1もやはりゼリーやムース状ですが、たんぱく質は入っていてもよいとされます。コード2はピューレやペーストなど、スプーンですくって食べることができるもの、コード3は固形ですが、歯がなくても舌でつぶして食塊にできる程度のかたさの食事です。
そしてコード4は、見た目もほぼ普通の食事と変わりありませんが、素材や調理方法を配慮しています。箸やスプーンで切れる程度の柔らかさで、誤嚥防止のための配慮が必要です。
嚥下食の介助時の注意点
誤嚥を防ぐためには、嚥下食のような食事内容への配慮だけでなく、食事の介助の仕方も重要になります。まず、食事をとる方が半覚醒状態など、注意が散漫なときは誤嚥のリスクが高い状態です。まずはしっかりと声かけをして、落ち着いて食事ができるようにする必要があります。
もちろん、食事の際の姿勢も大切です。自力で食事がとれる方は、かかとのつく、身体に合った高さの椅子に座って姿勢を安定させましょう。食べ物が逆流しやすい、あるいは胸につかえやすいという方は、上体を起こしてまっすぐな姿勢で食事をとるのがよいです。
逆流しやすいという方は食事後すぐに横になるようなことはせずに、しばらく体を起こしたままにしておきましょう。また、食べるとむせてしまいがちな方はやや前かがみで少し顎を引くようにすると、むせるのを防ぐことができます。
次に、充分に体を起こすことができずベッドで食べる方の場合は、45から60度程度の角度にベッドの背もたれを起こし、頭の後ろにクッションや枕を置いて首がやや前に曲がるようにすると誤嚥が起こりにくくなります。さらに、寝たきりの方など、食事の介助が必要な方は、ベッドの背もたれの角度を30度程度に起こすのがよいようです。
完全調理品なら簡単に嚥下食を用意できる!
完全調理品とは、食材を調理して料理として完成された状態で販売されている食品のことを指します。多くの場合、缶詰、レトルト、冷凍食品などで、手軽な調理が可能です。
嚥下食は、自分で用意をしようとすると、使用する食材の選択から始まり、柔らかくなるまで火を加えたり、すりつぶしたりという手間がかかってしまいます。嚥下食を必要とされる方は同時に介護が必要になることも多く、介護は食事の手助けに留まるものではないため、介護する方の負担は計り知れません。そこで、あらかじめ嚥下食として販売されている完全調理品を用いることで、食事の用意の手間を減らすことができます。
また、重度の嚥下障害の方向けの嚥下食ではとくに、彩りよく食欲をかきたてるような見た目のものを用意するのは困難です。しかし、近年では販売する企業の努力によって、多くの品目でよりおいしそうな見た目の食品を提供できるようになりつつあります。おいしく食事を摂ることは健康の源のひとつのため、この点も完全調理品を用いる利点といえるでしょう。
誤嚥性肺炎の原因にもなる嚥下障害。その原因はさまざまですが、加齢による筋力の衰退がそのひとつに挙げられているように、誰にとっても無関係とはいえません。嚥下食にも段階がありますが、用意の手間や食事の彩りを考えると、完全調理品は非常に便利だといえそうです。高齢化社会の進行を加味すると、今後需要がさらに高まっていく分野のため、注目していきたいものです。
